自分は、ほぼ未経験でフリーランスデザイナーになりました。今思うと、もう少し経験を積んでからフリーランスになればよかった、と後悔する場面も多いです。実際の失敗談と苦労した経験などをお伝えします。
経験談:未経験でフリーランスデザイナーになって失敗や苦労、後悔した話
まず、どうやって未経験なのにフリーランスになれたのか、詳しくはこの記事
このように、インハウスデザイナーを経てフリーランスになれたわけです。全くの未経験じゃないけど、インハウスデザイナーって、ほぼ学びが無いので未経験みたいなものです。フリーランスになってもインハウスデザイナーの延長の仕事をするなら大丈夫ですが、別のデザイン案件をするなら苦労が絶えないです。
デザイン会社を最低でも3年経験してないと、デザイン経験者とはいえない。
感覚的にはそんな感じです。自分はデザイン会社を半年も経験しておらず、例えば撮影の現場に出たこともありません。インハウスデザイナー時代は、上司の指示のもと、社内で雑貨系デザインを手伝っていただけです。印刷入稿したこともないレベル。パソコン上でのデザイン技術は少し上がったかもしれないですが、外のことが何もわからない状態。
知識としては知ってるけど、やったことない。
本の情報を信じるしかないので、リアリティに欠ける。
フリーランス初期は、前職のインハウスデザイナーの頃の上司から仕事がもらえていましたが、それだけでやっていけるほどの量はありません。広げていかないければいけないので、お仕事紹介のサービスに登録したり、知り合いデザイナーを手伝ったりしていました。
インハウスデザイナー時代の仕事以外の案件が入ってきた時に困ります。
1話:唯一の知人デザイナーからの仕事を失敗、二度と仕事が来なくなる。
知人といっても、ひと回り以上先輩で活躍しているフリーランスデザイナーです。手伝ってほしいと言われる仕事は、どれもおしゃれなものばかり。自分が手伝う仕事自体は簡単なものですが、クライアントと顔合わせることもあり、何かつながりができるかも。そんな風に思っていました。
その方が、あるタイミングで某大手外資系企業に就職します。(誰もが知る、超大手企業)
就職してから、その知人デザイナーから仕事を頼まれます。もう中の人なので、自分は超大手外資企業から仕事を受注したことになります。すごい飛躍のチャンス。
でも、失敗してしまうんです。
本国から大事なお客さんが来るので、1点ものの、オリジナル布張りのギフトボックスを提案してほしい。大事な仕事なので、是非良い提案をしてほしい。形は決まっているので、とりあえず紙面でイメージ作ってほしい。ふむふむ、自分は適当に家にある布をスキャンして色変換したりして、イメージに近い画像を作って提案します。
「ありがとう、社内で検討してみます。」
何日か経って「決まりました。この柄でいくことになったので、布送ってもらっていいですか?」
ん?「こんなイメージっていうつもりで、全く同じ布は存在しないんですが。。。」そう伝えると、「もう会議で決まってしまったの。探してもらえる?」血の気が引いた。とにかくまずい、同じ布を探さないといけない。いや、あるわけない。古着の布を色変換したものだし、、
そういってもしょうがない。行動せずにはいられず、その瞬間から家を飛び出して自分が知りうる生地屋を片っ端からすべて回る。無い。似たようなものはあった、でも、違う。とりあえず、違うけど近そうな生地を買い回る。
生地を手に、家に帰ってメールをチェックすると。
「もう大丈夫です。こちらで何とかします。今回の件はこれで大丈夫ですので、お支払いさせて頂ければと思います」
終わった・・色々終わった・・
それ以降、今でも連絡はありません。忙しくなったのかどうかは分かりませんが。信用というのは、一度の失敗で崩れるんだと思ったと同時に、カンプ提案した後のことを聞いていなかった、イメージで良いのか、実際存在する布じゃなければいけないのか、詳しくヒヤリングするべきでした。PC上だけで完結していたインハウスデザイナー時代とは違い、現実はもっと広く考えなくてはいけない。実務にあまりにも慣れていなかったことが原因です。
2話:モデル撮影未経験なのに、撮影依頼が来た時の恐怖
大手クライアントの小さい仕事を地道にこなしていた頃、そのクライアントから洋服のカタログのアートディレクションをお願いできないか、という依頼がきます。チームは決まっていて、デザイナーだけ変える。というもの。
自分は、モデル撮影ってやったことない。というか、撮影自体初めて。現場に立ったこともない。
大丈夫か?相当不安です。
さいわい前のデザイナーから引き継ぎを受けることができました。カタログのラフの作り方のこと、撮影のこと。撮影前に香盤表といって撮る順番を示したものを作るらしい。作り方、撮影で気をつけることなど。引き継ぎがなければ、また失敗するところでした。ただ、引き継ぎの際、クライアントも同席していた為、あまり素人さを出すわけにいかず、今回はこういう感じなんですね、という「だいたい分かってる感」を出さないといけない。本当はもっと細かく聞きたかったけど、あまり細かく聞くと初めてなのがバレる。そうなったら依頼取り下げだってありえます。
やったことない人に頼みたくないですよね。
知ったかぶりをしながら、打ち合わせするしかないのです。ラフ作りや撮影、探り探りこなす。撮影の判断にも時間がかかって、何が正解か分からない。周りのスタッフが経験者なので、ある程度委ねるしかないのです。きっと周りも「なんかこの人、慣れてないんじゃない」そんなムードもありましたが、何とか終えることができました。
業務自体は、全然スムーズじゃなかったけど、デザイン自体は気に入らていれたので、何とか切られることもなく続けて依頼されました。これが後に自分のフリーランスの安定案件になったのですが、未経験でフリーランスになると、とにかく危ない橋を渡ることが多々あります。
3話:チームが作れない、誰に頼めばいいか分からないから、仕事を受けられない
何か一つのプロジェクトを進めようとすると、チームづくりが必要になります。フリーランスになって17年経った今でも、業界内に知り合いが少ない。だからチームをつくるのが難しい。そのことで仕事を受けられないことがあります。モデルがらみの仕事って、今やってる案件だけで、別の洋服カタログの仕事が来た場合、誰に頼めばいいんだろう。今お願いしているヘアメイク、スタイリスト以外、誰も知らない。ネットで探して連絡するくらいしかないのです。普通、知り合い経由で紹介してもらってていうのが普通で、いきなりネットで直接連絡するのって、相手からしてみたら怖いと思います。
実際、ネット経由で連絡してみた人は何人か居ますが、とにかく返信が遅い。1週間とか1ヶ月とか連絡ない場合だってあります。やっぱり信用0ですからね。
自分も、どんな人かも分からない人達とチーム作るって怖い。
とある時には、お茶のパッケージお願いできる?という依頼が来た時も、印刷会社を知らない、食品パッケージって、どこに頼めばいいの?分からない。ネットで検索したところで、良さそうなところがない、予算はどうやって決めればいいの?最初に印刷会社に問い合わせるの?どうやって提案するの?サンプルとか作れるものなの?とにかく勝手が分からない。その仕事を受けるのが怖い。経験もツテもの無い、相談できる印刷会社の担当者も居ない。内容は良さそうで、広がりそうな案件だったけど、泣く泣くお断りしました。
友達に、洋服系のカタログ頼めたりする?て聞かれることもありましたが、ごめんちょっと知り合い少ないからチーム作れないんだよね。と断ったこともあります。
業界の知り合いが少ないと、仕事が広がらない。
ただでさえ不安定なフリーランスなのに、仕事を選ばないといけない状況になってしまったのはとても残念なこと。
4話:予算交渉に失敗、一般的な感覚が分からない
金額って本当に難しくて、安すぎても高すぎてもだめで、正直やってみないと大変さが分からないことの方が多い。修正が異常に多かったり。案外かんたんに終わったり。経験が少なすぎて、どのくらい大変なのか、いくらくらいが妥当なのか、社員経験が無いので全然わからないのです。
予算を聞かれて答えられない。金額交渉できない。
ほぼ毎回そうなんですが「いくらくらいで出来ますか?」特に初期の頃は全然分からないので、「予算はいくらですか?」逆に聞き返すことに。安く言われても「そんなもんかなぁ」と思ってしまったり、変に高い金額を提案しづらいので、自分からの提案は安めになってしまいがち。仕事量をこなしていけば、料金感覚がつかめてきますが、難しいですね。一応JAGDA料金表がありますが、高額設定なので、大きい企業のクライアント以外と仕事する時以外は参考になりません。
2chの情報を鵜呑みにして失敗
エディトリアル(ページ物)のデザイン料、1ページあたり、いくらくらいで出来ますか?と相談されたことがありました。JAGDA料金表は高すぎる、かといって何を参考にしてよいか分からず、ネットで検索しても全然出てこない。探しているうちに2chに行き着きます。「ページ単価10,000以下とか、安すぎるやろ。」とか、「単価4,000円なんてマジ地獄だから。」とかとか…。そうなんか〜。いい加減な情報を参考にしてしまいます。
「ページ単価、10,000円とかでしょうか。」
と提案してみる。すると先方からは「いや〜すみません、結構な金額ですね!失礼しました!」どうやら大きく予算感覚が違った様で、そのあともっと安くても大丈夫ですよ。と言ってみたものの「いやいや大丈夫です。予算がとれる仕事の場合お願いしようと思います!」といった感じで気を遣われてフェードアウトしてしまいました。
最低3年以上はデザイン会社で経験積まないと、フリーランスになった時、絶対後悔する
とにかく未経験でフリーランスデザイナーになってしまったことは、正直、苦労が多かったので、後悔の気持ちが強いです。もっとちゃんと会社で経験しておけばよかった。そんな風に思うことも多かったです。
17年経っても、埋まらない穴がある
17年経った今では、ようやく何とかなっている部分もありますが、埋まらない穴は埋まらないままです。だから、未だに受けられない仕事が多い。そうならないように、デザイン会社で実務経験は3年以上は積んでおくことおすすめします。大変だけど自分のように後悔しない為に、本当に大事なことなんです。
実務経験3年積むには、少しコツがいる
未経験でフリーランスになることはおすすめしません。最初は会社に入った方が楽
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